特集:ファニエラ&佐賀・高橋設計室コラボ企画「建築家とつくる模型」

高橋正彦(たかはしまさひこ)略歴

佐賀・高橋設計室所属、一級建築士。1967年東京都大田区生まれ。1989年佐賀和光+エー・アートに入社。1992年より佐賀和光が個人事務所を設立し、それ以降二人三脚で様々な建物を手掛ける。1999年8月佐賀が、逗子のサーフポイント大崎でサーフィンをしている 中、海の上で死去。その後事務所を引き継ぎ現在に至る。

テツヤ・ジャパンがいつもお世話になっている建築家の高橋さんにお願いして、ものづくりが好きな中学生に、模型作りを体験してもらおうという企画が生まれました。

地元・湘南の学校に通うケイくんは中学2年生。昔から工作が好きでしたが、今はスマフォのゲームに夢中です。なかでもお気に入りなのがマイン・クラフトという世界中の子どもたちに今大人気な空間系クリエイティブゲームです。ブロックを積み重ねて行き、自分だけの世界を作ることができます。それを使って自分の住みたい空間をまずは作ってみることに。

「これは俺と猫で住む家だよ。リビングが広くて、猫が自由に動き回れる空間。縁側があって、サザエさん家みたいな感じ。昔の雰囲気の家が好き」

屋根も瓦をイメージしています。渋い!この画像を元に、簡単な設計図を彼に書いてもらいました。(ブロック1つを5mmで計算)それが次の図。

ちょっと見えにくいですが、右上が寝室です。立体の画像から平面図を書き起こすのに少し苦労していましたが、この図を元にして、高橋さんに立面図と平面図を専用のソフト(CAD)で書き起こしてもらいました。これをスチレンボードにスプレーのりで貼り付けたものをカットしていきます。今日使う道具はこれら。

高橋:今日はよろしくね。

ケイ:よろしくおねがいします。

高橋:模型の意味をまず説明するね。僕は建築の仕事をしていて頭のなかで立体なものを考えてはいるけれど、図面は立体じゃないよね。頭で考えているものが成り立っているのか、イメージと同じかどうかを確認するために、実際に模型を作くるんだ。あと、家を建てたいと思っているお客さんに、平面図を見せても家がどういう形になっているかとても解りにくい。それを理解してもらうためにも模型を作って説明をするんだよね。

高橋:定規をあててパーツを切っていくんだけど、気をつけなくちゃならないのは、定規よりも内側に指を持っていくこと。カッターの刃先が30度のプロ仕様なのでよく切れるから気をつけてね。何度もこう、引いていけば綺麗に切れるよ。

松本:定規を押さえる力が結構必要なのかな。

高橋:そう。あとね、なるべくカッターを横に寝かせないようにしながら垂直気味に引くとうまく切れます。

高橋:大工さんが使う「差し金」って知ってる?

ケイ:ああ、聞いたことある。90度の…

高橋:そう。あれに似たもので、スコヤっていうの。90度を測るための道具。ここにカチッと当てると90度の線が出てくるから、この道具を使えばバサッと切れます。

松本:このくらい集中して勉強もやれたらいいのにね…

ケイ:それはムリ(笑)。でも好きなことは集中してできる。これは楽しいから。

高橋:頼もしい!もっと時間かかると思ったんだけど、速いなあ。じゃあどんどんやっちゃおう。これはドラフティングテープといって、仮止めのテープ。これで貼り付けていってイメージを作っていくよ。

高橋:角のところを綺麗に合わせたいのだけど。このスチレンボードは硬い紙が貼ってある中に発泡スチロールが入っているよね。ここを斜めに切ってあげると小口が見えない。そういうやり方もある。あるいは、外側の紙だけを残して、中の発泡スチロールを削って取ってしまうの。外側の硬い紙だけ残せば、ちょっと難しいけれど綺麗に仕上がるよ。どっちのやり方がいい?

ケイ:削ってみるほうにする。やってみたい。

高橋:そかそか。じゃあやってみよう。じゃあ一度、バラそう。まず、上の紙だけを切るイメージでやる。中の発泡スチロールまで切ろうとすると、全部切れてしまうからね。その後で、カッターのへりで発泡スチロールを削る。

カドの出っ張っているところを出隅(でずみ)っていうの、建築用語で。壁などの面と面が角で出会ったところの外側の部分ね。逆を入隅(いりずみ)と言います。

松本:ふと思ったんですけど、建築家になるのに学校での勉強は必要ですか?

高橋:勉強ねえ…この年になると、必要だったんだなって思うんだけどね…

松本:気づくのに結構時間かかってますね…

高橋:(笑)。中学からそのまま職人になる方もいるけど、高校出てからのほうが良いとも言われています。職人ってコツコツひとりでやり続ける仕事ではあるんだけど、結局誰とも喋らずにやるワケじゃないですよね。仕事って基本的に人とコミュニケーションをとりながらやるので、高校まで行ってからの方が望ましいのかなって。そこから建築家の場合、専門学校や大学に行くわけですね。

高橋:それにしても…速いなあ。

ケイ:(黙々と作業をする)

松本:美術とか得意でしたか?

高橋:いいえ。絵とか描けないです。全然描けないの(笑)。

松本:そうなんだ、意外。でも彼も描かないですね。絵画的な能力って、建築をやるうえでさほど重要じゃないのかもしれませんね。

…もうちょっと続けてやりたいのかな。お昼ご飯食べますか?

ケイ:ううん、いらない。最後までやる。

高橋:すごい集中力だなぁ。じゃあ、次は床を作ろう。内側だけ残して切ります。少し誤差がでてくるだろうから、壁の真ん中の線、通り芯というのだけど、ここでガサっと切ってしまって、少しずつ微調整して形を整えていこうね。今切ったのは2mmなの。床は5mm。さっきのより切りにくいのと、カッターが斜めになると綺麗に仕上がらないから、なるべく立てることを意識して切っていこう。これは100分の1の模型だよね、壁の厚みって15cmや18cmなんだ。だから壁の部分には2mmを使います。

松本:カッター、怪我したことありますか?

高橋:ありますよ。サクっと。指を切り落としたとかはさすがにないけどね。

松本:あいたたたた・・・気をつけないとダメですね。

高橋:このスチのりを使って、壁と壁をくっつけていくよ。スチレンボード用ののりです。セメダインとかだと発泡スチロールが溶けちゃうんだよね。

ケイ:あ、下手だな。難しい。

高橋:大丈夫。それは微調整できるから。まず何箇所か組み立てていこう。これを一周やってみる。何個かのパーツに分けてくっつけていって、まとまりができたらそれをくっつける。直角の部分はさっきのスコヤを使って作っていくよ。

高橋:家でこう、模型作っているじゃないですか。そしたらうちの娘なんかは小さい頃、仕事してるって思わないですよね。

松本:お父さん、工作して遊んでる(笑)

高橋:そう(笑)。仕事行かなくていいのー?って。でも難しいんですよね。

松本:社会人になってから建築家を目指す方もいますよね。

高橋:うん、いらっしゃいますよ。40歳を過ぎてからなられる方もいます。知り合いの建築家もどこかの大学のフランス文学科を出て、役所の戸籍課にいたけど仕事が余りにもつまらなくて。その時、たまたま隣の窓口が建築指導課で楽しそうに映ったらしくて。それから役所に勤めながら夜間学校行って建築家になられたそうです。

ケイ:…あの…最後まで切っちゃった。

高橋:あ。

松本:あ!

高橋:でも作り直しはできるよ。もう一枚スチレンボードに用紙を貼って、パーツを作れば大丈夫だよ。

…ずーっと今日、黙々とやっているんだけど、面白い?

ケイ:うん。面白い。

高橋:よかった。苦痛でしょうがないとか思われてたらどうしようって思ってました(笑)。

スチのりを使って、ほぼ間違うことなく壁と壁をあわせていきます。最後に床とくっつけて、下の部分はほぼ完成しました!

じゃーん。

高橋:よし、これで建物はできたので、屋根を作っていこう。ズレなく合わせていくのが難しいけど、これも少しずつやればできる。

切り取った屋根のパーツを重ねていきます。素材を変えることでぐっと家屋らしい雰囲気に。こちらもスチのりでパーツ同士をくっつけていきます。

ケイ:できた。あー気持ちいいわ。ぴったり。

松本:そういう感覚がやっぱり大切なんだろうな。やったという達成感を感じられるのは、建築家向きだよ、きっと!

ケイ:集中するとハラへらない、でも終わったらへった〜。大変だけど楽しかった。

というわけで完成です。

中学生が初めて作ったとは思えないほどの素晴らしい出来栄えです。

高橋さんのご指導があってこその完成です。これを機に、建築の世界に足を踏み入れてくれると嬉しいですね。理想の家の模型を自分で作ってみるこのワークショップ。ご要望がありましたらテツヤ・ジャパンでまた企画してみたいと思います。高橋さんありがとうございました!

写真と文/まつもとまゆみ

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