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建築家に聞いてみた、ほんとうのはなし(後半)

こんにちは。

旅女・小寺さんとたまに旅をお付き合いしている松本です。

前回お楽しみ頂きました、湘南の建築家・高橋正彦さんと地元のママたちとの座談会。

今日は後半です!

それではどうぞ。

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海野:とても初歩的な質問で恐縮なんですが「建築家」とは、どんな方を指すコトバなんですか?たとえば「設計士」とどう違うのかなって。

高橋:一般的に言われている建築士というのは、資格の名前ですね。試験に合格して、国土交通大臣の免許を受けて、設計・工事監理等の業務を行うものです。一級、二級、木造建築士と3種類あり、設計できる建物の規模が変わってきます。それに対して、建築「家」というのは資格だけの話ではなく、建物を建てるプロジェクトをまとめることができる人を指します。

僕の師匠である佐賀は一級建築士の資格は持っていませんでしたが、工務店をはじめ、大工やそのほかの職人など、みんなが彼の考えに向かって進んで行くようなカリスマ性のある人でした。資格はないけれど、そういう意味では建築家だったんだなと思っています。全体をコーディネートし、進行を統括することができるのが建築家です。僕、松本さんが自邸の設計を頼んだ建築家のことを、「設計士」って言ってたことがあって、この人は「建築家」って言葉はつかわないのかなあって思いました(笑)。

松本:いやほんと、そんなことも理解していなくて。大変失礼いたしました! うちを設計してくれた方は建築家の方でした(笑)。

高橋:それは冗談ですが、そういう意味ではきっとみんな「建築家」と呼ばれたいんだと思います。自分の関わった建物は責任をもってすべての進行と監理をさせていただきますよ。

【二世帯住宅の悩み】

松本:模型展のトークショーを拝聴したことがありますが、建築家の方々が二世帯住宅の提案をされていました。ひと口に二世帯住宅と言えども、同居型、半同居型、完全分離型など様々な考えがあります。切り口から親と共に住まうというライフスタイルについても考えることができる、と感じました。たとえば、同居なんて考えられなかった人たちにとっても。

高橋:そうですね。こういう箱はどうですかという提案よりも、まずは「どういう暮らしがしたいですか」という話からはじまり提案をしていくのが建築家の仕事でしょうね。お子さんが小さい最初の何年かはこういう住みかたにして、その後子供が大きくなった時には別の形に変化できるという提案をすることもあります。

渡部:ちょっと、わくわくしてきますね。前向きになれるっていうか。実は、義理の家族と住む話がチラホラと。そこで、義父から「あの家一緒に観に行くぞ!」と物件をいきなり紹介されまして。「どうだ、この家ならごはん作れそうか?」と尋ねられてしまって、「え?」(笑)。なんか、唐突すぎてしまって。

杉浦:なるよね、なる(笑)

渡部:杉浦さんちも、二世帯なの?

杉浦:うん、そういう話があったのよ。義理のね・・・

渡部:やっぱり義理の・・・

一同:(笑)

渡部:家をいくつも観始めたら気持ちが落ち込んでしまって、だんだん嫌になってきていたところでした。これ以上距離はつめられないなって、一年以上平行線なんですが、今の話を聞いたらわくわくしてきましたね。あと、そもそも今までこんな風に家のことを考えたことがなかったですね。家にあわせて住まないといけないと思っていたので、まさか家のほうからこっちに寄ってくれているとは思いもしなかったです。

高橋:でも、本来そうじゃないとダメですよね。ずっとそこで暮らしていくのに、自分のお金をせっかく出すのであれば、どういうふうに暮らしていくのかを考えたほうがいいですね。いろいろ考えることは煩わしいことでもあります。でもそこから積み上げていって、どうしたらいのかを考えていけば、いい家が作れると思いますよ。

杉浦:うちの場合も、古くなってきた家を壊して、二世帯にしようという話がでました。でも、話していて気がついたんですが、私たち夫婦の思う二世帯は完全分離の二世帯で、義父が考えていたのは完全同居だったんですよね。でも結局話が流れたので、今どのように進めていこうか話をしているところです。

海野:そのタイミングでハウスメーカーの営業に来られたら、勢いで決めさせられるしね。弱っているところに来られたら、うっかり安易にいろんなことを決めてしまいそうになるんですよ(笑)。

一同:そうそう。押しに弱いのよ主婦は(笑)

海野:私はいろんな条件が重なって結局建売を買ったんですけど、家族のこと、家づくりのことについて向き合ったほうが良いって思います。

高橋:家族で向き合うのはもちろん素晴らしいことですけど、大変な面もありますよね。以前、二世帯の家づくりについて、僕経由で家族の話し合いが進んだこともあります(笑)。建築家の仕事は単純に家のプランを考えるだけではなく、どのような暮らしをどんな家でしていきたいかを一緒に考えていくことだと思います。

【気になる耐震について】

松本:最近増えている地震についても気になるところなんですが。

高橋:構造的な部分に関しては、ハウスメーカーに劣るということはありません。建物の構造の耐震性については国土交通省で決めた基準があります。耐震等級2とか3と言われているのがそれです。その耐震等級をどこまで上げるかというのはそれ以外の要素、たとえばコストやデザイン性、機能や性能など全体のバランスの中で優先順位を考えた上で決めていくべきだと思います。ただ、構造的にハウスメーカーの家は地震がきても大丈夫だけど、建築家の家はつぶれちゃう、なんていうことは決してありませんね。

工事に関していいますと、大手ハウスメーカーは直接職人を雇ってはいないのです。ハウスメーカーの建物を作っている人たちは僕ら建築家が設計したものを工事しているのと同じ、地域の工務店だったりします。つまり○○というハウスメーカーの名前が書いている服を着た「なんとか工務店」の職人なワケです。ですから職人の方はハウスメーカーも建築家も大きな違いはありません。僕ら建築家の仕事は規格住宅とは違い、完全な自由設計です。そういう意味ではふたつとない仕事ですので、当然現場が始まってから判断しなくてはいけないことも出てきます。そのために現場にいってきちんと施行されているか図面と違っていることをしていないかチェックをしています。

杉浦:ハウスメーカーって「今度の地震でもうちは大丈夫でした!」と大げさに宣伝してたりもしますけど。

高橋:大きな地震が起こると、国のほうで構造基準の見直しが行われます。それに合わせて建物の構造の考え方も変わってきます。それは建築家の設計する建物も同じです。だから建築家と建てた家が不安、ということはありませんよ。

【いい家って、どんな家?】

高橋:僕個人が思っているいい家というのは「好きな場所がたくさんある家」という風に思っています。性能がどうのっていうのも大事なんだけど、それよりも家族それぞれに好きな場所があること。

海野:建築家の方は、このあたりに陽が入るとか、キッチンの光の量はこのくらいかとか、すべて計算でわかるものなんですか?

高橋:計算も大切なんですが、僕はその土地の周りをとにかくぶらぶらするんですよ。晴れているときや雨のとき、考えて煮詰まったらそこに行くようにしています。当然、方位や周りの建物との関係なども考えるんですが、それプラス体感で設計するようにしています。

昔ね、事務所から遠方の設計を頼まれまして、遠いからそんなにしょっちゅう行けない場所なんです。そこで朝早く現場に行って、1日そこで過ごしました。そしたら、近所の人に怪しまれちゃって。

一同:あやしい(笑)

高橋:車を敷地の近くに止めて、眺めて、お腹が空いたらコンビニに行ってお弁当を買ってきて車の中で食べて、また近所をぷらーっとする。そしたら、隣のおばさんがこっちを見てる。そりゃ見ますよね。知らない男が朝からずーっと家の周りをうろうろしているんですから(笑)。こちらからご挨拶させていただいて、この土地で設計をするものですと名乗ったら、おばさんから時間による光の変化の具合や風の向きなど教えてもらえたんです。そういった情報も大事かなと思っています。

松本:それはそこに一日中いないと得られない情報ですね、確かに。

高橋:あとは、工事が始まって現場が進んでいきますよね。職人さんというのは朝の10時と3時には必ずお茶を飲み、昼食のあとに昼寝をするんです。職人さんってその家でその時間帯に、一番気持ちの良い場所を知っているから、そこでお茶お飲んだり昼寝をするんです。僕は代々大工の家で育ったんですけれど、それはほんと昔から変わらない。

一同:へー!

高橋:その季節で一番気持ちが良い場所。夏だったら一番涼しいところ。冬だったら一番暖かいところ。現場で一緒にお弁当を食べたりすると、やっぱりここが正解だったか!とか、ここも気持ち良いんだ!とか。工事が間に合いそうなら、少し窓の位置を高くしてみたりしてね。工事が始まったらできることとできないことがあるんですが、なるべくできることはやるようにしています。

海野:建築家と家を作るメリットというのはそういう楽しさの部分ですね。上棟式をちゃんとやるとかね。うちは実家が田舎なので、5円玉とおもちを撒きます。楽しいんだ。

高橋:僕も去年、鎌倉でおもち撒きましたね。他には、前に山梨の上棟式でバケツをいただきました。

松本:バケツ?

高橋:うん。もしうちが火事になったら、このバケツに水を入れて消火してねっていう。

一同:へー!おもしろい!

渡部:(杉浦)みきちゃんちでおもち撒こうよ。行くよ!

一同:行く行く!

海野:なんか夢が広がる話だよね。みんなのお家づくり、楽しみになってきたよ。

松本:今日は楽しいお話をたくさん聞かせていただいてありがとうございました。

高橋:また機会があれば、いつでも(笑)

一同:ありがとうございました!

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ーいかがでしたでしょうか?建築家の高橋さんによる、わかりやすくて知らなかったことだらけな家づくりの「ほんとうのはなし」。私たちが思っているよりも、建築家の方は身近な存在なのかもしれません。家づくりを考えている方、そろそろ実家がリフォーム時だなと感じている方などは、あなたの街の建築家たちに、一度ご相談を考えてみてはいかがでしょうか?

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佐賀・高橋設計室

住所:〒240-0111 神奈川県三浦郡 葉山町一色2151-1

電話:046-876-9186

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写真と文/まつもとまゆみ

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